どうも、ミツヒコ(@monotolife)です。
突然ですが、皆さん藍染をしたことがありますか。
古くから日本人の馴染みとしての「勝色」や、「ジャパンブルー」という言葉と共に今も親しまれている藍。地元福山市で3年前に出会った藤井さんが、畑で藍を育て、藍染のお仕事をしているのは聞いていました。
しかし、中々機会もなく僕はこの記事を書くまで未体験。
昨年から繊維産地に関わりながら、今回やっと体験することができました。柔らかな手触りと徐々に染まっていく服。体験しないとわからない面白さを、少しでも伝えられたら嬉しいです。
目次:
- 藍屋テロワールへ向かう
- 藍を知り、藍で染める
- さいごに
1. 藍屋テロワールへ向かう
藍屋テロワールは福山市の中心街から約50分離れた山の合間にあります。
キャンプ場もある山野峡の麓。標高は徐々に高くなり、暑い夏も少し涼しく感じられました。
少しだけ細い山道をGoogle Mapのナビに沿って運転すると1件の建物。駐車場はすぐ隣です。
軒先には藍に染まった手袋。
そして、藍で染まった「TERROIR」
ドアを開けると、藍の香り。
藍染の糸がいくつか干してありました。
説明をしてくれるのは藤井さん(ケンケン)。
広島のワークショップで初めて藍染をしたときに虜となり、仕事を辞めて徳島で修行。その後福山で藍染屋を始めたそうです。
藍についての説明を受けながら、料金を払って藍染体験に臨みました。
2. 藍を知り、藍で染める
藍を知る。
「藍染といっても、大半は農業なんですよ」
ケンケンさんがそう話す理由は、染めに使える染料ができるまでの工程の多さから。天然灰汁発酵建てと呼ばれる工法は、全て天然由来。藍の機嫌を見極めながら、1年間かけて育てていくそうです。
- 育苗
- 畑で育てる
- 藍の刈り取り
- 発酵作業
- 藍の槽づくり
(詳細は藍屋テロワールへ:コチラ)
まず約2万株の苗を育てます。
丸い葉から育ち始めた苗を植えたら、雑草を抜き、育て、収穫が始まります。
6月中旬の立派に葉を広げた藍。アマガエルもくつろいでいました。
収穫は真夏も続き、5㎝ほど残して刈られた藍は数週間でまた大きな葉を広げます。
刈り取りも、いくつか工程があり
- 夕:藍の刈り取り
- 朝:刈り取った藍の選別
- 昼:藍を広げ、干す
というルーティーンワークをこなすそう。
刈り取った藍はビニールハウスの中で乾燥させ、かき混ぜ、また乾燥させます。花が咲く10月までに刈り取りを終えなければならないため、必然的に真夏の作業になるそうです。
乾燥した藍は深い色合いに変化していました。
「これで完成なら、良いんですけどね」
そう笑いながら話すケンケンさん。
ここから「蒅(すくも)」と呼ばれる藍染の原料を作ります。
水を加えて発酵させる作業を週に1度×18回の繰り返し、約100日続く地道なが始まります。発酵が進むと藍の葉は80度まで上昇することもあるらしく、室温は冬でもサウナ状態。
この発酵工程で失敗すると、染料には使えなくなるそうです。
作業を無事に終えて初めて、染料となる蒅(すくも)が完成。結局、1年かけて藍染の準備が整います。
そして、ここまでが準備。
藍染めに大切な液は、この蒅(すくも)を使って「藍が元気な状態」の槽を作ってやっと染まります。
元気がない時には灰汁を入れて調子を出してもらうことも必要らしく、時には元気になるまで我慢強く待つ工程も生まれるとか。
自然の力を借りた藍染の奥深さを感じます。
藍で染める
今回は藍染体験として、私物の服を持って伺いました。
本来の藍染体験はハンカチやTシャツなどを選んで染めますが、服の場合料金は重さにより変動します。体験の流れは
- 重さを測る
- 藍に浸す(数分揉み混む)
- 絞って空気に触れさせる
- 2 – 3を繰り返し、濃く染める
- 水で洗って脱水
- 天日干しとお湯洗い
説明と以上の内容で、約1時間半の体験でした。
重さを測る
まずは重さを測ります。
250g。今回の料金は7500円でした。
支払いは現金以外も選べます。僕はPaypayで支払い。
そして、いよいよ藍染へ。
藍で染める
藍は手に残りやすいため、通常の体験では手袋の貸し出しがあります。
僕はせっかくなので手袋無しで体験。何日間残るのかもドキドキです。
少しヒンヤリした槽の中へ服を入れます。
空気を抜くように揉みながら、表面に服が出ないように全体をつけこみます。
槽によって染まりやすさが違って、この黄色の槽は薄く染まるみたいです。いきなり濃い染めをするのではなくて、薄い液から回数を重ねて徐々に濃く仕上げるのが藍染だとか。
一度上げて絞り、
ポケットや袖を開く。
この作業で藍を空気に触れさせて酸化を促し、染まります。あとは希望する濃さまで繰り返し。僕は7回くらいしたのかな。
揉んで。
絞って。
開いて。
また、染めて。
「紺を深くしたい」とお願いしたら青の槽に変えてもらえました。
仕上げの槽
約30分かけた最後の仕上げ。
今回は特別に、ケンケンさんたちが使う特別染まる槽へ。
入れた瞬間に手触りが違いました。
柔らかさと滑りがあって、僕の腕もあっという間に藍色に染まります。
「藍が元気だと、よく染まる。」
本当に、生きた藍を肌で感じながら染め上げさせてもらいました。
爪も、手も、藍色。
元気な藍たちを無駄に洗い流さないよう、できるだけ絞って仕上げます。
僕の手、藍と一体化してきましたね。手袋しなくてよかった。
3. さいごに
仕上げは外で水洗いします。
揉めば揉むほど、水が紺に染まっていきます。
しっかりすすいで
軽く絞って
隣の脱水機で軽く脱水。
そして、完成です。
化学繊維の縫い糸だけが白く残り、グリーンのチェックは深く沈んだ藍色の中へ。大人なスプリングコートができました。
僕の手もしっかり染まりました。
この後の仕上げとして、
- 数日間の天日干し
- お湯で揉み洗い
をすることで灰汁が抜けてより深い藍色になるそうです。梅雨時期で中々天日干しができないですが、楽しみです。
話をしながら1時間ちょっとの藍染体験。
自分の服を染めていくのはとても楽しかったです。あと、藍の手触りは自然を感じられました。
そういえば、実はこの記事では「藍染の中にある、一番きれいな瞬間」を掲載していません。
思わず声が出るような瞬間が、藍染にはあります。初めて藍に触れる時に知る美しさ、ぜひ現地で体験してみてください。
【7月15日追記】
しっかり天日干ししてお湯洗いすると、灰汁がしっかり抜けました。
これを2~3回繰り返すと、鮮やかな藍色になるそうです。
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